裁判例 特定の月の勤務実態から他の月の休憩時間における労働状況を推認した例
2019.08.28更新
特定の月の勤務実態から他の月の休憩時間における労働状況を推認した例
(東京地裁 平成30年9月20日判決)
1 事案の概要
美容外科クリニックを経営する被告と、当該クリニックの各医院において医師として稼働する契約を締結していた原告が、雇用契約に基づく未払賃金及び時間外割増賃金を請求した事案
2 判決の概要
(1)原告の労働者性
①報酬は、勤務日数に対応して支払われており、また、所定の日数を勤務した場合には定額で支払われることとされており、売上げの増減に応じて基本給が増減するといった危険を原告が負担することはなかった。
②診療日や診療時間について原告自身が決定していたなどの事情は認められず、予定された出勤日に診療行為を行うか否かについて諾否の自由があったとはいえない。
③原告は、当該クリニックに備え付けられた器具等を用いて業務(美容整形術の施術等)を行うものとされていた。
以上より、原告は、労働基準法9条の「労働者」に該当する。
(2)時間外労働(休憩時間の労働)に対する未払賃金の有無
原告が最も繁忙であったと考えられる平成26年の12月に業務が繁忙で1日1時間の休憩が取れなかったと認められる日は、原告が診療を担当する1日当たりの患者数が8名以上の日であり、少なくとも1日当たりの患者数が7名 に満たない日に1日1時間の休憩時間を確保できない事態が生じていたとは認め難いから、本件請求対象期間におけるその余の月においては、各月ごとに、1日当たりの診察患者数が7名以上になる日の日数に応じて、同月との繁忙度を比較し、これを基に、原告が休憩を取得することができなかった時間数を推認するのが相当である。以上の方法により認定した休憩時間を取得できなかった時間数の時間外労働に対する割増賃金額を算定する。
投稿者: